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100円以下で回鍋肉

「100円以下」と「回鍋肉」をエントリ・タイトルに使う案として
去年マリエンバートで』や『ティファニーで朝食を』や
『謎解きはディナーの後で』やがモジり源として浮かんだが、
殊に『回鍋肉は100円以下で』とすると『謎解き』にマッチしたのだが、
いや、別に私は当該ミステリもドラマ版も別に好きなわけでもないのだった。
と、そこに至って急に元々のインスピレーション源だったらしき
『南京路で花吹雪』が割って入って来て
めでたくタイトルは「100円以下で回鍋肉」に落ち着いたのだった。
共に中国絡みという点でも意にかなっているし。



タイトルではキリよく「100円以下」としたが
実際に細かく刻んでいくなら90円以下、75円以下、65円以下、辺りまで
必要十分の下限を下げていくこともできる。
その場合、私の目的/ヴィジョンには
貧乏人ほど料理をしろ、そして何よりまず「中華」を覚えろ、という主張が
根本としてある。
コンビニでもスーパーでも屋台的な店でも、今時100円で何が食えるだろう?
料理を、とりわけ中華料理的なメソッドを覚えれば
(コメ代は別としても)夕食のメイン皿を100円以下で作るのは
まったく難しいことではない。
ちなみに、過去エントリの
簡単貧乏ポテトサラダも焼きビーフンもチャプチェうどんサラダも    
100円以下、どころか大抵は70円、60円、50円以下でできている。
今回は、いまさら改めての感があるが
レシピ的な文に加えてその材料費にもスポットライトを当てつつ
語ってみよう。



例によって例のごとく
「私の回鍋肉」はもはや「回鍋肉」と呼べないものとなっているかもしれず
また、読むあなたも「そんなん回鍋肉と言えないよ」と感じるかもしれないが
そういう場合は「肉代」を適宜25円足し、35円足し ー すればいいだけだ。
60円でスタンダード最下限を作れるのであれば
そこに40円分なりのエクストラ豚バラを足して
「満足のいく」量・質に仕上げることも容易だろう。



食材:キャベツ、玉ねぎ、にんにく、ソーセージ
調理材・調味料:サラダ油。酒、砂糖、(液)味噌、一味唐辛子、ケチャップ、
醤油。

「えっ、豚バラは?豆板醤・甜麺醤は?」と疑問が湧くだろうが、
そしてもちろん使いたい人は使って結構なのだが、なくてもできる。
というか、標準的・規範的「回鍋肉」を何十食となく作ってきた結果の
たどり着いた、あるいは悟った・見つけ出した最小限要件がこうなのだ。
エクストラを足すのに特に手順や留意点が変わることはないため、
その辺は後回しにして、先を急ごう。

材料費:
キャベツ2枚(外葉)もしくは3枚(内側)、180〜210gほど、1食10〜15円。
玉ねぎ1/2個(中玉)もしくは1個(小玉)、100〜120gほど、1食10〜17円。
にんにく1片、6〜10gほど、1食4円〜5円。
(ウィンナー・)ソーセージ1/2本、もしくは1本、10/20gほど、1食13/23円。
調理材・調味料、1食5〜10円。
合計42円〜70円ほど。

すごく大雑〜把〜に言って、だが
上記の額はけっして(小さめに)盛っているわけではない。
なんなら公正さを担保するためにむしろ大きめ(高め)に勘定してるくらいだ。
私はそれを実際に、節約のためというよりむしろ
楽しみ・ゲーム性のためにやっていることなのだが、
「2/2キャベツ98円、2、3、4、5、6、7...」というふうにPC上でメモを付け
「その98円のキャベツを何食で消費し終えたか」を逆算していくとよく判る。
「2/2に買った1186gのキャベツを、昨日は182g、今日は163g使った」みたいな
馬鹿げた実数計算で割り出すよりずっと実践的で役に立ち、また簡単だ。
調理材・調味料の実費計算の際にはより効果的でもある。



0. 準備
ソーセージは薄い半月切り、にんにくは薄切り。
玉ねぎは薄切り、あるいはさらにそれを半切り、キャベツはざく切り。


1. ソース/合わせ調味料作り
私は頭の中で、「合わせ調味料」も「ドレッシング」も
全て「ソース」と捉え、呼んでいる。
さらに言うと、中華も西洋料理もその他の世界の料理も
「ベース・ノート」と「トップ・ノート」で「その料理」が成る、と考える。
中華では殊に「合わせ調味料」の出番とそのレシピが云々されることが多いが、
主に「炒め」というメソッドでベース・ノートが既に定まっていれば
トップ・ノート=ソースは薄味・少量で
「その料理らしさ」を出すのに、また全体をその味で統一するのに
足りればいい程度のものなのである。
で、私の回鍋肉ソース、多分に四川風、は
味噌(液味噌が便利)・一味唐辛子・ケチャップ・醤油のミックス技が   
豆板醤や甜麺醤の代わりを為すもので
・砂糖1:酒4くらいの割合で、砂糖は甘みでなく旨み・コクのために
一味唐辛子を1、2振り、辛いのが好みなら3振りでも
・酒の1/4〜1/3ほどの液味噌、1/2ほどのケチャップ
・醤油を2、3滴ほど、中華/東アジア風味の「揺り戻し」に
でできている、
別段誇りにするほどの発明/発見でもないのだが
旨み・コクのための砂糖、トマト風味と甘酸っぱ辛みのためのケチャップが
単に一味唐辛子頼みのピリ辛みに留まらない「旨い辛さ」を提供する。   
それゆえ豆板醤も甜麺醤も要らないっちゃ要らないのだ、割高になるし。
ソースは総量でせいぜい15ccから20cc。
創意工夫・試行錯誤好きの人にはさらに
削り節ひとつまみ、玉ねぎ・にんにくのほんの切りかす程度を
酒+砂糖の段階でエキスが抽出されるように浸しておくのもおすすめしとこう。


液味噌は、味噌使いに伴う様々な不便・ハードルを綺麗に解決する好商品


2. 炒め
焼きビーフンの際にも語ったことだが
野菜の炒め順は、また肉・魚介・その加工品こみでも、
火の通りにくさや味出し要因上の必要性から決まる。
ここでは
強力・万能味出し材の玉ねぎを最初に、次ににんにく、次にソーセージ、
最後にキャベツ(予めレンジ・アップで水分を飛ばしておくと吉)、の順で。
肉を「鍋に戻す(回鍋)」というメソッドは、ここでは採る必要がない ー
そもそも下茹でするものがないし。
電子レンジがない場合、大部のキャベツを予め空炒りして
一旦他容器に取り出しておくのはアリ。
玉ねぎ・にんにく・ソーセージの各旨みがキャベツを味付けるのを意識する。
キャベツのいちばん外側の青葉を嫌う人も多いが、
この回鍋肉に起用し、焦がし気味なくらいに強めに炒めると甘みが強く出て良い。
ちなみに、100gあたり58円そこらの豚バラを25〜50g(15〜29円)使い
ソーセージの代用(笑)とするのももちろんアリである。


3. 仕上げ
ソースを回しかけ、15〜30秒ほど煮立ち軽く香ばし感が出るよう強火にし
出来上がり



「中華料理」というと
手料理の中でもハードルの高い、おいそれと成功するものではない、
難しい料理ジャンル、と考えている人が多いような気がするが
私に言わせると、中華料理ほど簡単に美味しく作れる料理ジャンルはない。
私が人生で最初に作った中華料理は青椒肉絲か回鍋肉で、
おなじみ『Cook Do』商品の箱裏の原材料内訳を見て記憶し
買い揃えた調味料と基本どおりの食材、そして記憶・推測・解釈頼みのメソッドで
最初からフツーに美味しく成功作を物したものだった。
そこから足し算・引き算、合理化・省力化、アレンジを施して
いわば無限のヴァリエーションとして「得意」「定番」を増やしていったのだ。
今回のこの「回鍋肉」にしても、
食材をひとつ、あるいは2つも3つも替え/増やし
あるいはソースを大幅に別物に換え ー
などしていると
名のあるものなら青椒肉絲に、酢豚に
さらには「甘酢ケチャップ炒め」に、味噌マヨネーズ炒めに、と
特有の名を付けようもなく、付けるまでもない無数のレパートリーに分岐する。
もしかしたら次回、その辺をざっと、端折りつつまとめてみる、かも。