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高田馬場 カレーの『エルム』- さすらいごはん#2




今でもあるのか、それとも建物ごと別物になってるかは知らないが、
東西線高田馬場駅と直結するビル(書店、楽器/レコード店の入っているビル)の地下1F、
もしくは地下中1Fに、4、5店の飲食店が並ぶスペースがあった。
その中に、長い楕円のカウンターとその中の厨房という造りの『エルム』という店があった。
「カレー屋さん」と言ってしまってもいいだろうが、
ナポリタン的なスパゲティやハンバーグ定食くらいのメニューもあったと思う。
だが、私にとっては圧倒的にカレー屋であり、実際カレー以外のものを食うことはなかった。
カツカレーでせいぜい400円くらい、「素」のカレーなら300円前後だっただろう。



その当時すでに学生ではなかった私だが、
高田馬場 - 早稲田という街は
お気に入りのレコード店、みっけもののある古着屋・量販店、美容室と
ひと月に1度くらいは用足し/気晴らしに使う街であり、
そういう時の帰り際の晩飯どころとして
『エルム』を重宝していたのだ。



典型的な「おじちゃん・おばちゃん」型経営の『エルム』のカレーは
特別に〇〇風というような、凝ったり高級だったりするようなものではなかったが、
スタンダードに美味しい、いわば懐かしの味のカレーであり、
さっさと腹を満たしたいだけの私には
十分美味しく十分リーズナブルなメニューだったのだ。
殊にカツカレーと来た日には
その当時でも400円というのは破格クラスであり、
「学生街」でもあるはずの早稲田/高田馬場でも特別だったと言えるだろう。
'00年代にはなくなったらしいが、もしその跡を継ぐ方がいらしたら、
その店名は『エルム』であるべきだろう —
多数の「恩義」を感じるいにしえのファンたちで賑わうこと必定だから。



いまや「カレーを食える店」と言えば
専門にせよ全般にせよ、大手チェーンか「名店」が幅を利かせ
ちっちゃな個人の店、たとえば「駅ホームの食堂」でさえ絶滅の危機に瀕しているだろうが、
「どうでもいいんだが腹をしっかり満たしたい」
「どうでもいいんだがマズいものだけは食いたくない」
という者/状況にとって
カレーほど重宝にして必要十分なメニューはそうない。
カレーの3/4はやさしさでできている —
飲食業を志す人々には忘れてほしくない格言であろう(今私が作ったのだが)。